2013
01
19

エヴァ TV 版を観直してみた

Title.jpg

新劇場版「 Q 」の話題に触発され、年末年始に TV 版 DVD を観たんですよね。

放映当時はアニメに興味を失っていたお年頃で、その後再放送やら DVD をナナメ観したのですが・・・もう漠然とした記憶しか無かった。
他方でテレビ放映された新劇場版の前作を眺めていたら 「なんか単なるロボットアニメに見えるんだけど?」 「こんな話だったっけ?」 という思いが沸き、ちゃんと観直してみました。

当初記事にする気はなかったのですが・・・久々の TV 版は面白かったのでまとめてみましたよん。

○ミリオタな視点から
エヴァには 「ありとあらゆる場面で」 ってな勢いでミリオタな演出やオブジェクトの登場がありますね。
とは言え、それらは既に多くのファンによる膨大な検証があるのでしょうから、少し視点を替えてみました。

「第一発令所」
1st_controlling_station.jpg
正面モニターと HUD 状に組み合わせた地図 / 地形・グリッド情報が素敵です。

なんとも近未来っぽい構造ですが、原典となる最古の存在は第二次大戦時(バトル・オブ・ブリテン)における英空軍の防空指揮所のような気がします。
RAFcommand_post.jpg
規模はミニマムですが、一階の地図や掲示板に敵味方の戦術情報をリアルタイムに表示させ、中二階の指揮官がその全体像を俯瞰把握することで素早く的確な対応を行うという基本システムは全く同様です。
ちなみに、同大戦の独軍における同系指揮所への呼称 「オペラ・ハウス」 の方が、この構造イメージにピッタリでしょうか。


全編に多数登場する、同作オリジナルの垂直離着陸の汎用機 YAGR-3B
Rocket_Volley.jpg
戦闘型らしいこのタイプでは、大きく張り出した操縦席(または銃手席)や、僅かに放物線を描くロケット弾の曳航軌跡などの描写が非常にソレっぽい感じ。

他方で旧態・低威力なロケット弾を斉射するというのは、ミリオタ的なリアリティーなどではなく、映像としての派手さや、特撮怪獣モノにおける地球防衛軍の攻撃イメージかな?

ちょっと驚いたのはこのカット
Fuselage_underside.jpg

正確にはミリオタというより模型オタ視点なんですが、ウェザリングが効いた機体表現以上に、機体内部色が塗り分けにされている点に驚き。
しかも現用機に多い 「ジンクロ」 ではなく、旧軍機の塗色として知られる「青竹色」 っぽい気がします。
これはちょっと書物をかじっただけでは描けない気がするのですが・・・

ところで、この垂直離着陸機は最近著名な 「オスプレイ」 が発展したようなティルト・ジェットですが
YAGR_3B.jpg

一見して特徴的な機体のデザイン・イメージは近年のティルト・ローター / ジェット 機ではなく、「空飛ぶバナナ」 ことパイアセッキ H-21 系に思えます。
Piasecki_H21b.jpg


対潜兵器の描写
ASW.jpg
描き手側がニワカなミリオタ視点では 「 VL 型のミサイル」になっちゃう気がします。
ここであえて短魚雷やら、旧型っぽいアスロックを描写しちゃうのが心憎いところ。

同話には(判りやすい)艦艇の詳細描画なんかもありますが、個人的には

艦載機エレベーターを踏み抜いてバランスを崩す弐号機
aircraft_elevator.jpg

(実在する)ニミッツ級空母の飛行甲板を妙に正確に描画してる
flight_deck.jpg

共にストーリー上では必然性のかなり薄い、なかなかのミリオタ描画かと。


ヤシマ作戦における、ポジトロン・ライフルの発射シーン
muzzle_brake.jpg
この銃は物理エネルギー弾ではなく、荷電粒子を発射するといういわばビーム兵器なのですから、このマズルブレーキかつ上方に抜ける発射ガスや反動(零号機が弐号機の救援に射撃するシーン)といった表現というのはホントはオカシイ。
ただしもちろん、そんな 「リアルっぽい設定」 を求めるのはニワカの仮性オタだけ。
これはこれで単純にカッコイイし映像として迫力がありますね。

上でも幾つか挙げましたが、こうした点は同様に超絶ミリオタ視点を交える宮崎監督(ジブリ)の作品にも散見される特徴と思います。


判る人は重症です。
type100SMG.jpg
このカットで 「えぇ?!これって百式機関短銃じゃ?」 と画面に釘付け。

同話にはラックに全体描画された画もあるのですが、そっちだとぼんやりベルグマン系の SMG っぽい、としか判りません。
むしろこっちが百式と判る瞬間。

何話のどのシーンか判る=エヴァオタとして重症です。
何の話か判る=ミリオタとして重症です。


○神は細部に宿る

記憶では 「当時としてはキレイなアニメーション」 と錯覚していたのですが、今回観直したら、キャラ等のアニメーションの大半はかなり平凡なんですよね。
しかしやはり、複数の背景や重要な静止画(撮影上可動もする)、重要シーンのアニメーションは、途方もなく感動的。
逆に言うと、美しい静止画を上手く組み合わせることで、最小限のキャラアニメーションでも印象的なドラマを創っている気もします。

Power_outlets.jpg
ある意味、 「コンセントを繋いで動く巨大ロボット」 みたいな表現をあえて大真面目にやってるエヴァですが、ここまで描かれたら観る側は真逆の認識を持っちゃう。
これもまたエヴァの演出であり、ハリウッド映画にも似た映像マジックかと。

Shogi_pieces.jpg
ストーリーとは無関係な一瞬のカットなのに、妙にリアルな漆書将棋駒とか


static_image.jpg
コンビニ食品画はややイマイチでしたが、他は背景と呼ぶには凄まじい描画


Background.jpg
キャラやアニメ部分ではなく、壁面背景の方ですよ。
もっと簡略化した画で構わない気がしますが・・・不可思議なほどの描き込みっぷり。


○印象的な 「光と影」 への拘り
Flash.jpg
やはり監督・スタッフの拘りなのか?或いは当時最新の撮影技術が待望のものだったのか? とにかく、エヴァでは全編に渡って多彩な美的な光源・陰影表現を感じました。

ガラス等の反射・透過表現
Reflected_light
かなり強い光源を多数用いるのがエヴァの特徴ですが、同時に反射や透過表現も多数。
専門技術的なことは判りませんが、曲面に反射投影される画というのはこの頃から確立された撮影技法なんでしょうか?

カッコイイなぁと思ったのは、この表現
Reflected_Representation.jpg
ヘリの窓に上空の日光と雲をストロボ的に反射描画することで、ローターの回転を表現してます。
(画像上が分離合成した反射、下が反射なし画)

なんて情緒的!と思ったのはこのシーン
Light_glass.jpg
裸のレイを(結果的に)押し倒しちゃう衝撃の場面ですが、背景で揺れるカーテンの隙間から外光が差し込み、水入りビーカーに反射、さらに室内にハレーションを起こすという非常に凝った周辺表現になってます。


REIs_room.jpg

ちなみにこの冷蔵庫上の景色も、天板の上に布があり、水の入った透明なビーカーと半透明な薬瓶、紙の薬袋、アルミ箔のカプセル入れなど、ことごとく反射率の異なる、あたかも美術表現上の課題を集めたかのような挑戦的配置になってますねぇ。
確かに室内風景としては自然なのですが・・・原風景の 「綾波レイの部屋(画像右)」を思うと、やはり敢えて描画したような気もします。


transparent.jpg
これも実に平凡なカットなのですが、複数の反射・透過・反転等の撮影が駆使されており、場面の重要度とは不釣合いな再現率に少々驚きました。


実に美術的というか叙情的と思った、涙滴の表現。
teardrops.jpg
明るく反射率の高いテーブル上に落ちる涙滴≒透明な水滴なのですから、平凡な描画ならもっと明るいというか、せいぜい照明を強く反映した白っぽい表現に落ち着く気がするのですが・・・よりにもよって暗いグレーなんですよね。
えぇ、もちろん悪い意味じゃありません。
この瞬間 「あぁ、スゴいなぁ」 と感嘆です。


○作画とアニメーターの凄さに気付かされる

エヴァのキャラクターにおける、静止していても何かを感じる繊細な描画にはキャラデザを手掛けた貞本さんの力が大きい気がしますが、もちろん映像作品としては担当した全スタッフの力量の凄さによるものなんでしょう。

上記のミサト号泣のシーンですが、全体としてエヴァ屈指の感動シーンでしょうね。
Collapse_a.jpg
Collapse_b.jpg
演出は判るものの、、詳細を確認したら少しもったいない気すらした引きの構図。
単にしゃがむような動きではなく、まさに 「崩れ落ちる」 というような不自然な体幹や重心の移動と共に、奇妙な四肢の折れ曲がりが描画されてます。

cross_arm.jpg
続く寄りのシーンでは、顔を覆う動作になるはずの腕の動きが、過程として力なく十字を形作るという印象的な所作に。

このシーンを何度も観て感じたのは、アニメーターさんってのは一体どれだけの人体像を描いてきたんだろう?という畏敬の念でした。

ところで、ミサトさんには相対となる麗しいシーンもありますね。
kiss_scene.jpg
まるでワルツを踊るかのような、とても素敵なキスシーン。
実を言うと上記 2 場面ともアニメとしての動きの全てにそれほど強い感慨はなかったのですが、コマ送りでキャプチャーしてみたら、この動きを思いつき、かつアニメーションとして再現するのってスゴいなぁと痛感。


もちろん、女の子の可憐な動きと言えばアスカ
Asuka_gestures.jpg
表情の七変化も可愛らしいのですが、背を付けゆったり寝転ぶ姿から微かに伸びを打つような所作、或いは大きく全身を伸ばす動きと、とても丁寧に描かれてる気がします。
ついでに言うと、このシーンのアスカは年相応の柄とデザインのワンピに真っ白いデッキシューズと、全編において出色の少女らしい演出かと。
ここって、ミサトに対するアスカの心象など、セリフ回しも印象的なシーンですね。


続く動きもまた、思いを(計算しつつも)即行動に移すアスカらしい所作
Asuka_cling_to_Kaji.jpg
正直言うと、ここまで長い髪を背にこの動きはできないだろ?とは思いますが、ほぼ男子向け視点のこのアニメにおいて、そんな考察は無粋というものでしょうね。


静止に近い短いカットですが、こんな画にもちょっと感動
class_president.jpg
カバンを背後にキチンと置き、姿勢正しく腰掛ける委員長らしい着席姿。
なんですが・・・踵が浮いた少女らしい下肢の描き方ってのは、正しい着座姿勢だけを意図していては決して描けない繊細な画に感じます。

また全編で病室を表現する、淡いブルーで色調統一した演出もまた非常に印象的。


ワンカットの表情では、このシーンが印象的かな?
cant_look_straight.jpg
無垢だった頃の自分を、そしてゲンドウを、苦々しく横目で眺めるしかない赤木博士。


静止画といえば、作中にはあえて彩色仕上を行っていない原画?を使っている部分もありますね。
sketch.jpg
個人的に興味を持ったのは画そのものではなく、描いている紙がデッサン紙もしくは水彩紙のような紙質だってこと。

ハッキリ判らないのですが、どうも絵コンテ?原画?の方も似たような紙っぽい。
sketch_part.jpg
こうした画は、てっきりケント紙のような紙に描き、陰影は全てペンで線表現すると思っていたので、かなり意外でした。

これはもとは絵画専攻である貞本さんの意向なのか? GAINAX の特徴なのか?はたまたコレが一般的なのか?
良く判りませんが、アニメーターさんってのは絵描きとして多くの才能を持ってるんだなぁと感じた次第。



○新劇場版では消滅したエヴァらしさ
メインのファン層に支持される方向性からなのか?劇場版ではやたらシリアス路線の展開だけが定着してるような気がするのですが・・・

weird_face.jpg
TV 版の頃はこうしたハズシもちゃんと混じえてるんですよね。
原典を挙げられないんですが、マンガか何かのオマージュ表現でしょうか。
こうした二次元界のタランティーノたる表現もまた、庵野監督作らしい魅力だと思うのですが・・・


○オマケ~ 0.1 秒以下の描画~
各場面をキャプチャーしていて解ったのですが、多彩な表現のある同作にはアニメーション以外の画にも 0.1 秒以下( 0.05 秒単位)に描画される興味深い画があったりしますよ。
とてもとても紹介し切れませんが、オープニングの中から興味深い映像を二点だけ。
オープニングの瞬間画(全て目視可能)は殆どが本編に出てきますが、この二点はちょっと判りませんでした。

レイの裸身画
REI_OP_img.jpg

なかなか意味深な感じの画ですが、原画というかイメージ画ですかね?


第三東京市周辺の地図
MAP_3rdTokyo.jpg

反転発光させた線画として部分的にモニター表示される地図の原画かな?
小田原市周辺も大きく改変描画されてるんですが、コレってどうやって描いたんだろ?


○国内版ディスクのメリット
最近は国内盤より安く買え、(リージョン以外の)本編映像としては同一の海外版 DVD が人気みたいですね。
でもまぁ、国内版には台本や設定などの周辺情報も在るようなので、やっぱり相応の価値はありますよ。
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