2013
02
19

チェリャビンスク州の隕石について

2013meteor_trail.jpg

現地時間 2013 年 2 月 15 日に落下し、近代史上に類を見ない人的被害をもたらした隕石についてデータをまとめてみました。

世界が驚愕の事態に加え膨大な映像もあり、すぐ研究機関などによって解析されるものと思っていましたが・・・各研究機関では 2012 DA14 の解析が中心だったのか?数日経ってもイマイチ納得の内容が出てこない。

そこで、現時点で Web で拾える情報から自分でまとめましたよ。
まぁ多少の錯誤もあるかとは思いますが、一応の参考まで。

なお、詳細な概略は Wiki 『 2013 年チェリャビンスク州の隕石落下 』にもありますね。

まず、適時の改定や相違はあるものの NASA とロシア科学アカデミー、地理協会チェリャビンスク支部などから公表・報道された分析を総合した同隕石の概略

☆大気圏突入前

直径: 17 m
質量: 1 万トン
密度: 4 {g/cm3} 前後(石質もしくは石鉄質)
速度:30km/s (≒ マッハ 88 )
(参考:スペースシャトルの再突入速度=マッハ22.8)
対地進入角: 45度

ここに、チェリャビンスク市革命広場前の固定映像を元に、爆砕時の閃光による陰影の移動から隕石の軌道を概算するという素晴らしい見識の Web 記事データも参照統合。

OGLE EARTH より Stefan Geens さんの記事
Reconstructing the Chelyabinsk meteor’s path, with Google Earth, YouTube and high-school math
http://ogleearth.com/2013/02/reconstructing-the-chelyabinsk-meteors-path-with-google-earth-youtube-and-high-school-math/

同検証データにより Google earth 上に軌道を再現
GEdata_2013meteor_b.jpg

★大気圏突入~爆砕

対地進入角 40 ~ 32 度
大気による減速後:18km/s (≒マッハ 53 )~ 13.9 km/s
爆砕高度: 30km ~ 50km (大きく 3 つに分裂とされる)
爆砕時の放出エネルギー:380 ~ 500 キロトン( TNT 火薬換算)
地上に落下した隕石:約 10t (平均的な石質密度とすれば直径 1.5m 前後)


少々解り辛い映像ですが、落下はメテオサット 9 によっても撮影されています。

Weather satellite footage of Russian meteor trail from Feb. 15, 2013


同サーマルイメージはこちら
img_thermal_impact.jpg


GEmap_Eurasia_2013Meteor.jpg
地球上における隕石落下の位置関係はこのあたり

方位角としてはほぼ東⇒西で、カザフスタンとの国境線をかすめるように飛来し、露チェリャビンスク州に落下。
同州中心都市のチェリャビンスク市(人口百万人)上空付近で爆砕しつつ、その破片は約 65km 先のチェバルクリ湖などに降着とみられています。

これら距離感を東京付近で再現すると、東京湾上空で爆砕しつつ秩父湖に落下、成層圏のさらに上層で起こったその爆発閃光は、日本海側の新潟市(半径 200km 圏)からも見えた、ということになります。

ちなみに概算された落下軌道を日本付近まで並行移動させたところ
GEmap_Asia.jpg
机上概算を元にした上での、さらに大まかな仮説ですが、日本なら九州付近に落下の可能性があり、例えば福岡~ソウル~ピョンヤンが危険線上に並びました。
この移動って地球上の距離感だと膨大ですが、宇宙規模の視点ではほんの僅かな差でしかないんですよね。


爆炎らしき様子が確認できる、隕石本体の爆砕直後?と思われる隕石雲
meteor_20130215.jpg


上記の動画解析にヒントを得て、私も爆発時の高度を探ってみました。

МЕТЕОРИТ ЧЕЛЯБИНСК

(固定映像にて、衝撃波が到着以降の後半は無視で可)

映像内タイムライン 09:23:35 に強い閃光
dashcam_Meteor1.jpg

同 09:25:55 に炸裂音と振動が記録されています
dashcam_Meteor2.jpg

衝撃波とは音波ですから、この到達時差で概算の高度(相対距離)を求めます。
140sec x 0.34(km/s)= 47.6 km
Meteor_over_Russia.jpg

実際の爆砕は閃光の直前でしょうから、市中の窓ガラス破砕など強い衝撃波をもたらした最大規模爆発時の高度は 50 km 前後と思われます。

もう少し軌道等が判りやすいよう、現地 Google Earth 画像を別イメージで
Fireball_Over_Russia.jpg
オレンジ:隕石落下の軌道(推定)
水色☆:破片の落下点 チェバルクリ湖
黄色:最大爆発位置のイメージ
ピンク:衝撃波のイメージ(実際にはもちろん全周放射です)
赤:チェリャビンスク市(これもイメージであって実限定はありません)

ここでふと不一致を感じたのは、 NASA 算出の放出エネルギー量。
報道の「広島型原爆の 30 倍」というイメージは凄まじい強大さを感じさせますが、約 50 km もの距離で窓を破砕するほどの衝撃波( 0.03 psi 以上の尖圧が必要)を生じさせるには、むしろ小さすぎるようです。

参考: Wiki 核爆発の効果>その他の効果
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E7%88%86%E7%99%BA%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C#.E3.81.9D.E3.81.AE.E4.BB.96.E3.81.AE.E5.8A.B9.E6.9E.9C
注:エネルギー換算であり核爆発ではないので「爆風被害」のみ参照

被害半径は核出力の三乗に比例(=千倍の威力で十倍)であり、出力 20 倍でも同半径はせいぜい 3 倍の拡大であることに留意。
同時に、距離を考えると数百キロトン単位のエネルギーでは、あれほどの衝撃波をもたらすとはやや考えづらいことに。

そこで実被害から逆算する形で、 40 ~ 50 km もの範囲でこの衝撃波をもたらすエネルギー値を探しました。

shockwave_data1.jpg

正確な対照データとは言い難いでしょうが、 1 メガトンの核爆発がほぼ合致の値でした。

shockwave_data2.jpg

広島市 第 2 回核兵器攻撃被害想定専門部会 配布資料より
『 爆風及び熱線の威力の計算等について(406KB PDF) 』

http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1179033172026/files/siryou.pdf

爆発が放出したエネルギー値が倍増ということは、同隕石の速度や質量がさらに大きかった可能性があるのかもしれません。
※運動エネルギー:速度の 2 乗に比例 / 空力加熱率:速度の 3 乗に比例※

なお、ここで言う隕石の「爆発(或いは「爆砕」)」とは、大気の「空力加熱」による瞬間的な破壊であり、隕石そのものが爆発物という訳ではありません。

参考: JAXA 「はやぶさ」物語より 原理 「再突入カプセル」と「空力加熱」
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/about/principle3.html

私もそう誤解していましたが、テレビで東大教授が延々「大気摩擦による熱破砕」というような解説していたことには少々驚きました。
素人向け解説ゆえの齟齬かもですが、それって典型的な誤りだそうで・・・

補足参考: Wiki 大気圏再突入>宇宙船の再突入
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B0%97%E5%9C%8F%E5%86%8D%E7%AA%81%E5%85%A5#.E5.AE.87.E5.AE.99.E8.88.B9.E3.81.AE.E5.86.8D.E7.AA.81.E5.85.A5

ちなみに実被害には、衝撃波ではなく小破片が直撃したらしき事象もあります
Meteor_impact.jpg


○各国研究機関の分析と、概算の再まとめ

大気圏突入まで

直径: 17 m
質量: 1 万トン
密度: 4 {g/cm3} 前後(石質もしくは石鉄質の組成)
対地進入速度:30km/s 以上
対地方位角: 273度
対地進入角: 45度

大気圏に突入し

爆砕高度:約 50km (大きく 3 つに分裂)~ 29km
爆砕時の放出エネルギー:500 Kt ~ 1 Mt ( TNT 火薬換算)
地上へ到達した衝撃波: 0.03 ~ 1 psi
地上に落下した隕石:約 10t (最大でも直径 1.5m 前後)
対地速度:18km/s ~ 13.9 km/s に減少
対地進入角: 40 ~ 32 度に減少
対地衝突角: 20 度未満

同隕石の組成は平均的密度の石質もしくは石鉄質であったらしく、それは結果的に大気圏での破砕となり放出エネルギーが偶然にして不幸にも上空通過の都市に影響を与えました。
ただ、もしこの大きさで鉄金属質の隕石であっった場合は大部分が対地直撃した可能性があり、バリンジャー・クレーターに準じるような被害を与えたかもしれません。

参考:ナショナルジオグラフィック ニュースより
「新発見のクレーター:隕石衝突の危険性」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100723002


○隕石落下の予測・対処は可能?

大きさにもよりますが、まず不可能みたいですね。
これは貴重にも大気圏突入前に発見・観測された 2008 TC3 の例が暗示的かも。
http://ja.wikipedia.org/wiki/2008_TC3

2008 TC3 の発見 : 対地衝突の 20 時間前
解析と実落下 : 精密な軌道解析も、現実としては 100 ~ 200 km のズレで爆散

都市や国家としては危機的だが、地球環境レベルには無影響な大きさの隕石など、よほどの偶然でもない限りまず探知不能。
仮に事前探知出来たとして、現実的な避難や迎撃等のあらゆる対処には手遅れ。

まぁ地球上で起こる巨大地震はおろか天気ですら同様のレベルなんですから、ごく当然と言えば当然でしょうね。
科学的探求は必要ながら、我々庶民は心配するだけムダってもんかと。

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